銀行の格付けや決算書の分析で、固定比率と固定長期適合率は、自己資本比率や流動比率と並んで「安全性」を見る指標として使われます。
固定比率とは、建物や設備などの固定資産を、返済しなくてよい自己資本(純資産)でどれだけまかなえているかを表す指標です。固定長期適合率は、そこに長期の借入金などを加えて見る指標です。この記事では、2つの指標の意味と違い、流動比率との関係、100%を超えたときの見方と対策、低いほうがいいのかを順に説明します。
固定資産(土地・建物・機械・ソフトウェア・長期の投資など)は、何年もかけて売上を生み、少しずつお金に戻ってくる資産です。そのため、買うためのお金も、すぐに返さなくてよいお金でまかなうのが安全だと考えます。固定比率は、その固定資産が返済不要の自己資本の何倍あるかを表します。
固定比率 = 固定資産 ÷ 純資産(自己資本)× 100
100%以下なら、固定資産をすべて自己資本でまかなえている状態です。100%を超えると、超えた分は借入金などの負債でまかなっていることになります。
中小企業で、設備をすべて自己資本で買える会社は多くありません。実際には、5年・10年の長期借入金で設備を買い、利益から少しずつ返していきます。それでも、返済の期間が設備の使える期間に見合っていれば、資金繰りは無理なく回ります。この考え方で見るのが固定長期適合率です。
固定長期適合率 = 固定資産 ÷(純資産 + 固定負債)× 100
固定負債は、長期借入金・社債など、返済の期限が1年より先の負債です。固定長期適合率が100%以下なら、固定資産を「自己資本と長期の資金」でまかなえていることになります。
| 固定比率 | 固定長期適合率 | |
|---|---|---|
| 分母 | 純資産 | 純資産 + 固定負債 |
| 見ていること | 固定資産を自己資本だけでまかなえているか | 固定資産を長期の資金(自己資本と長期借入金など)でまかなえているか |
| 100%を超えたとき | 一部を借入金でまかなっている。それだけでは問題とは言えない | 一部を短期の資金でまかなっている。資金繰りが苦しくなりやすい |
| どう使うか | まず見る指標。100%を超えたら固定長期適合率も見る | 100%以下に収まっているかを確かめる |
財務省の法人企業統計(2025年度)では、全産業(金融業・保険業を除く)の固定比率は133.8%、固定長期適合率は79.5%です。日本の会社全体で見ても、固定比率は100%を超えるのがふつうで、長期の借入金まで含めて設備をまかなっています。固定比率だけを見て「100%を超えているから危ない」と判断しないことが大切です。
貸借対照表が次のような会社で計算してみます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 固定資産 | 3,500万円 |
| 純資産 | 2,400万円 |
| 固定負債(長期借入金など) | 1,600万円 |
固定比率 = 3,500 ÷ 2,400 ≒ 145.8%
固定長期適合率 = 3,500 ÷(2,400 + 1,600)= 87.5%
固定比率だけを見ると、固定資産の3分の1ほどを借入金でまかなっています。ただ、長期借入金まで含めると87.5%で100%を下回るので、設備を長期の資金でまかなえていることがわかります。自社の数字を入れて、同じ業種・同じ資本金規模の平均と比べたい場合は、固定比率・固定長期適合率の計算ツールを使えます。
貸借対照表では、資産の合計と、負債と純資産の合計が必ず一致します。そのため、繰延資産などの特別な項目がなければ、次の関係が成り立ちます。
固定長期適合率が100%を超える ⇔ 流動比率が100%を下回る
固定資産を長期の資金でまかないきれない分は、流動負債(1年以内に返すお金)でまかなうしかありません。その分だけ、1年以内に入ってくるお金(流動資産)よりも、1年以内に出ていくお金(流動負債)のほうが多くなります。法人企業統計の2025年度の業種・規模別の数字でも、この関係はほぼすべての区分で成り立っています。設備の買い方が、短期の資金繰りにそのまま響くということです。流動比率の見方は流動比率・当座比率の計算ツールで確認できます。
固定長期適合率が100%以下なら、設備を長期借入金で買っている状態で、多くの会社と同じです。借入金の返済が利益とキャッシュフローで無理なく回っているかを確かめましょう。借入金の水準が妥当かどうかは、会社の借入可能額の考え方が参考になります。
設備などの長く寝かせる資産を、1年以内に返す短期の資金で買っている状態です。毎年の借り換えが必要になり、金融機関の姿勢が変わると資金繰りが一気に苦しくなります。主な対策は次のとおりです。
安全性の面では、固定比率も固定長期適合率も低いほうが望ましいとされます。ただし、低ければ低いほどよいわけではありません。必要な設備投資を控えているだけなら、将来の売上や生産性を損ないます。
また、建物や設備を多く持って稼ぐ業種(不動産、宿泊、運輸など)は、どちらの指標も高くなる傾向があります。一般論の「100%以下」だけで判断せず、同じ業種・同じ資本金規模の会社と比べ、自社の推移を見ることが大切です。業種・規模ごとの平均は、固定比率・固定長期適合率の計算ツールの一覧表で確認できます。
純資産がマイナスだと、固定比率は分母がマイナスになるため、意味のある値になりません。この場合は、固定長期適合率(純資産と固定負債の合計がプラスなら計算できます)で長期の資金とのバランスを確かめつつ、まずは債務超過の解消を優先して考えます。自己資本の厚さそのものは、自己資本比率の計算ツールで業種平均と比べられます。
安全性の面では低いほうが望ましいとされます。固定資産を返済不要の自己資本でまかなえている度合いが高いからです。ただし、低すぎるのは必要な設備投資をしていないだけのこともあります。設備や建物を多く持つ業種ほど高くなるので、同じ業種・同じ規模の水準と比べて判断します。
固定資産の一部を借入金などの負債でまかなっている状態です。それだけで危ないわけではなく、日本の会社全体でも固定比率は100%を超えています。次に固定長期適合率を見て、長期の借入金まで含めて100%以下に収まっていれば、設備を長期の資金でまかなえているので大きな問題はありません。
分母が違います。固定比率は固定資産を純資産だけで割り、固定長期適合率は純資産と固定負債(長期借入金など)の合計で割ります。固定比率は「自己資本だけでまかなえているか」、固定長期適合率は「長期の資金でまかなえているか」を見ます。
流動比率は1年以内の支払いに対する余裕(短期の安全性)、固定比率は設備などへの投資を自己資本でまかなえているか(長期の安全性)を見ます。なお、固定長期適合率が100%を超える会社は、ほぼ必ず流動比率が100%を下回ります。長期の資金で足りない分を、短期の資金でまかなっているためです。
固定比率は固定資産を自己資本でまかなえているか、固定長期適合率は長期の資金でまかなえているかを表します。日本の会社全体でも固定比率は100%を超えるのがふつうなので、固定比率が100%を超えたら固定長期適合率を見て、100%以下に収まっているかを確かめましょう。固定長期適合率が100%を超えると流動比率も100%を下回り、短期の資金繰りに響きます。
出典:財務省「法人企業統計調査」年次別調査(e-Stat「時系列データ 金融業、保険業以外の業種」)から計算(2025年度分まで)。最終確認日(データの取得日):2026年10月14日