労働分配率とは|わかりやすく解説、付加価値と粗利のどちらで割るか、高い・低いの見方

賃上げを考えるとき、銀行や顧問税理士から「労働分配率」という言葉を聞くことがあります。

労働分配率とは、会社が生み出した付加価値のうち、人件費に回した割合です。計算は「人件費 ÷ 付加価値」ですが、付加価値の代わりに粗利で割る方法もあり、どちらで計算したかで数字が大きく変わります。この記事では、計算式と付加価値の出し方、計算例、法人企業統計(2025年度)による規模別・業種別の水準、高い・低いの見方、下げるための考え方を順に説明します。

労働分配率を一言でいうと

会社は、仕入れた材料や外注した仕事に自社の手を加えて、新しい価値を生み出しています。この「自社で生み出した価値」が付加価値です。労働分配率は、その付加価値を「働く人(人件費)」にどれだけ分けたかを表します。

たとえば労働分配率が70%なら、稼いだ付加価値100のうち70を人件費に回し、残りの30で家賃・税金・利息を払い、利益を残していることになります。

計算式:分母が2通りある

労働分配率の分母には、主に次の2つが使われます。

計算式主に使われる場面特徴
人件費 ÷ 付加価値 × 100財務省「法人企業統計」、中小企業白書など公的な統計業種・規模の平均と比べられる
人件費 ÷ 粗利(売上総利益・限界利益)× 100中小企業の経営計画、顧問税理士の月次資料など試算表からすぐ出せるが、付加価値で割るより低く出る

どちらが正しいということはありません。大事なのは、比べる相手と同じ定義で計算することです。法人企業統計の業種平均と比べるなら付加価値で、社内で毎月追いかけるなら粗利で、と使い分けている会社もあります。粗利の出し方は粗利率の計算式と出し方で解説しています。

人件費に含めるもの

法人企業統計の人件費は、役員給与・役員賞与・従業員給与・従業員賞与・福利厚生費の合計です。役員報酬も入ります。福利厚生費には、会社が負担する社会保険料(法定福利費)も含まれます。製造業や建設業では、製造原価・工事原価に入っている労務費も人件費に含めて計算してください。

付加価値の出し方

付加価値の計算には、足していく方法(加算法)と、売上から引いていく方法(控除法)があります。法人企業統計は加算法で、次のように定義しています。

付加価値 = 人件費 + 支払利息等 + 動産・不動産賃借料 + 租税公課 + 営業純益
(営業純益 = 営業利益 − 支払利息等)

支払利息等は足して引くので打ち消し合い、実際には次の式で計算できます。

付加価値 = 人件費 + 賃借料(地代家賃・リース料など)+ 租税公課 + 営業利益

控除法は「売上高 − 外部から買ったもの(材料費・仕入・外注費など)」で、考え方としてはわかりやすい一方、何を外部購入とするかで数字がぶれます。業種平均と比べる目的なら、加算法で計算するのが確実です。

計算例

売上高1億2,000万円、売上原価8,400万円、営業利益360万円の会社で、損益計算書から次の金額を拾ったとします。

項目金額
人件費(役員報酬・給与・賞与・法定福利費・福利厚生費、原価の労務費を含む)2,100万円
賃借料(地代家賃・リース料)240万円
租税公課60万円
営業利益360万円

付加価値 = 2,100 + 240 + 60 + 360 = 2,760万円
労働分配率(付加価値で割る)= 2,100 ÷ 2,760 ≒ 76.1%

同じ会社を粗利で割ると、粗利は 12,000 − 8,400 = 3,600万円なので、2,100 ÷ 3,600 ≒ 58.3%です。定義が違うだけで、18ポイント近い差が出ます。「うちは58%だから業種平均の70%より低い」と比べてしまうと、実態を見誤ります。

規模別・業種別の水準(2025年度)

財務省「法人企業統計調査」(年次別調査、金融業・保険業を除く)から、付加価値で割る定義の労働分配率を計算しました。業種や資本金の規模に属する会社の合計から計算した値です。

資本金の規模別(全産業)

資本金労働分配率人件費率(参考)
1千万円未満78.9%23.5%
1千万円以上1億円未満73.5%16.6%
1億円以上10億円未満61.2%11.8%
10億円以上46.5%9.3%
全規模63.0%13.7%

規模が小さい会社ほど、労働分配率は高くなります。小さな会社は設備や資本で稼ぐ部分が小さく、付加価値の多くを人の働きで生み出しているためです。中小企業が「一般に50〜60%が目安」といった数字と比べると、ほとんどの会社が高すぎることになってしまいます。自社と同じ規模の数字と比べることが大切です。

業種別

業種全規模資本金1千万円未満資本金1千万〜1億円
製造業65.5%81.1%77.8%
建設業68.5%80.0%69.9%
卸売業63.1%75.0%65.4%
小売業62.6%83.8%67.1%
飲食サービス業74.6%75.1%75.1%
宿泊業50.7%73.2%51.4%
情報通信業64.1%87.3%90.4%
運輸業、郵便業64.8%90.8%81.9%
医療、福祉業77.2%79.5%78.3%
生活関連サービス業84.9%91.8%80.8%
不動産業38.2%49.1%49.9%

人の手で価値を生む業種(生活関連サービス、医療・福祉、飲食など)は高く、建物や設備で稼ぐ業種(不動産、宿泊など)は低くなります。業種による差は20〜40ポイントあり、業種をそろえずに比べても意味がありません。

ここに載せていない業種や、資本金の細かい区分の数字は、労働分配率の計算ツールで見られます。自社の人件費・賃借料・租税公課・営業利益を入れると、労働分配率を計算して、選んだ業種・規模の平均と並べて表示します。

推移(全産業)

年度全規模資本金1千万円未満資本金1千万〜1億円資本金10億円以上
2021年度68.9%91.0%78.8%52.4%
2022年度67.5%84.6%77.3%51.2%
2023年度65.1%80.0%76.9%48.2%
2024年度64.2%81.5%74.4%47.3%
2025年度63.0%78.9%73.5%46.5%

どの規模でも、ここ5年は下がり続けています。付加価値(利益を含む)の伸びに、人件費の伸びが追いついていないということです。「賃上げの余力がある」と言われる根拠の一つですが、規模が小さい会社ほど水準そのものが高く、余力は大企業ほど大きくありません。

高い・低いはどっちがいいか

高すぎる場合

人件費を払ったあとに、家賃・税金・利息を払って利益を残す余地が小さくなります。賃上げをしたくても原資がなく、設備投資や借入の返済にも回せません。付加価値で割る定義で100%を超えているときは、人件費を本業の稼ぎでまかなえていない状態です。付加価値は人件費・賃借料・租税公課・営業利益の合計なので、100%を超えるのは、営業利益が赤字で、しかもその赤字が賃借料と租税公課の合計より大きいときです。

低すぎる場合

稼いだ付加価値に比べて、人への還元が少ない状態です。利益は出やすいものの、同業より給与水準が低いと、採用や定着で不利になります。ただし、不動産業のように設備や資産で稼ぐ業種や、自動化が進んだ会社では、低いのが普通です。

結局のところ、同じ業種・同じ規模の水準と比べて、自社の過去からの動きを見るのが正しい使い方です。上がっているなら、人件費の伸びに付加価値の伸びが追いついていないサインです。営業利益率や流動比率、自己資本比率もあわせて業種平均と比べたい場合は、経営指標の業種別平均ツールで決算書の数字からまとめて確認できます。

労働分配率を下げるには

労働分配率は「人件費 ÷ 付加価値」なので、下げる方法は「付加価値を増やす」か「人件費を減らす」かの2つです。賃上げが続く今は、人件費を減らすより、付加価値を増やすほうが現実的です。

最低賃金の引上げで人件費がいくら増えるかの見積もり方は、最低賃金の計算方法で紹介しています。増える人件費と、それを吸収するのに必要な付加価値をあわせて考えると、価格をどれだけ上げるべきかが見えてきます。

よくある質問

どちらか一方が良いとは言えません。高すぎると人件費を払ったあとに利益が残らず、賃上げや投資の余力がなくなります。低すぎると、稼いだ付加価値を人に十分還元できておらず、採用や定着で不利になります。同じ業種・同じ規模の会社と比べ、自社の過去からの動きを見て判断します。

付加価値で割る定義で100%を超えるのは、人件費が付加価値を上回っている状態です。付加価値は人件費・賃借料・租税公課・営業利益などの合計なので、100%を超えるときは営業利益が赤字で、その赤字が賃借料と租税公課の合計より大きいことを意味します。人件費を本業の稼ぎでまかなえていないので、早めの対策が必要です。

財務省の法人企業統計では、人件費に役員給与・役員賞与も含めています(従業員給与・従業員賞与・福利厚生費と合計)。中小企業では役員報酬の割合が大きいため、業種平均と比べるときは役員報酬を含めて計算してください。

人件費を何で割るかが違います。人件費率は人件費 ÷ 売上高、労働分配率は人件費 ÷ 付加価値です。仕入や外注が多い業種は売上高のわりに付加価値が小さいため、人件費率が低くても労働分配率は高いことがあります。

まとめ

労働分配率は、付加価値のうち人件費に回した割合です。付加価値で割るか粗利で割るかで数字が大きく変わるので、比べる相手と同じ定義で計算してください。法人企業統計(2025年度)では、全産業63.0%、資本金1千万円未満の会社では78.9%で、業種による差も大きくあります。一般論の「目安」ではなく、同じ業種・同じ規模の水準と、自社の推移で判断しましょう。

出典:財務省「法人企業統計調査」年次別調査(e-Stat「時系列データ 金融業、保険業以外の業種」)から計算。2026年9月1日公表の2025年度分まで。最終確認日:2026年10月14日

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