建設工事費デフレーターとは|見方と使い方、過去の工事費を今の価格に直す計算

「数年前に建てた建物を今建てたらいくらかかるか」「工事の予算は増えたのに、実際にできる工事量は増えているのか」。こうした問いに答えるときに使われるのが、建設工事費デフレーターです。

建設工事費デフレーターは、建設工事にかかる「名目の工事費」を、基準年度の「実質額」に直すための国土交通省の指数です。今は2020年度を100として表し、建設総合のほか、住宅・非住宅・土木など工事の種類ごとに毎月作られています。この記事では、指数の見方、何から作られているか、過去の工事費を今の価格に直す計算、企業物価指数との違い、使うときの注意点を説明します。

建設工事費デフレーターの見方

指数は基準年度の2020年度を100として、その時点の建設工事費の水準を表します。指数が135.4なら、同じ工事が2020年度より35.4%高くかかる水準という意味です。円の金額ではなく、物価の動きの比率を表す数字です。

最新の値と、建設総合・住宅・土木などの系列ごとの動きは、建設工事費デフレーターの推移のグラフで確認できます。

2つの時点の変化は、割り算で出します。e-Statの公表値では、建設総合は2025年7月が124.7、2026年7月が135.4なので、この1年の上昇率は 135.4 ÷ 124.7 − 1 = 約8.6%です。

指数は工事の種類ごとに分かれていて、主なものに次の系列があります。

系列対象
建設総合建築と土木を合わせた建設工事全体
建築総合住宅と非住宅(事務所・工場など)の建築工事。住宅総合・非住宅総合や、木造・鉄筋コンクリート造・鉄骨造などの構造別もある
建築補修建築物の補修工事
土木総合公共事業(河川・道路・下水道など)とその他の土木(鉄道・電力など)

何から作られているか

建設工事は1件ごとに中身が違い、一般の商品のように市場の値段をそのまま追うことができません。そこで建設工事費デフレーターは、建設工事にどんな資材・労務・サービスがどれだけ投入されているか(産業連関表の建設部門の投入の割合)をもとに、それぞれの価格の動きを合わせて作られています。

個々の価格の動きには、毎月勤労統計調査(労務費)、企業物価指数(資材など)、企業向けサービス価格指数、消費者物価指数が使われています。2020年度基準では、令和2年の建設部門分析用産業連関表をもとに投入の割合が決められています。

使い方1:過去の工事費を今の価格に直す

過去の工事費が、今の物価ならいくらになるかの目安は、次の式で出せます。

今の価格の目安 = 過去の工事費 ×(今の指数 ÷ 過去の時点の指数)

たとえば2025年7月に1億円だった建設工事は、2026年7月の指数で直すと、1億円 ×(135.4 ÷ 124.7)= 約1億858万円です。建て替えや増築の予算を考えるとき、過去の見積もりや実績をそのまま使わず、この計算で今の水準に直してから比べると、予算不足に気づきやすくなります。

使い方2:名目の工事費を実質額に直す

年ごとの工事費の合計を比べるときは、物価の影響を除いた実質額に直してから比べます。

実質額 = 名目の工事費 ÷ 指数 × 100

名目の工事費が前年より10%増えていても、指数が同じ期間に10%上がっていれば、実質額はほぼ同じで、できる工事の量は増えていないことになります。国土交通省は、公共事業の事業評価、PFIなどで賃金や物価の変動に応じて請負代金を変更するとき、建物の評価額の算定(保険金額の調整や不動産鑑定)などに使われるとしています。

企業物価指数との違い

企業物価指数は、鋼材やセメントなど、企業どうしで取引されるモノ1つ1つの価格の指数です。建設工事費デフレーターは、資材に加えて労務費やサービスも含め、工事の種類ごとの投入の割合で合わせた指数です。特定の資材の値上がりを見るときは企業物価指数の品目を、工事全体の費用の水準を見るときは建設工事費デフレーターを使うと考えると分かりやすくなります。指数の読み方は企業物価指数とは、資材の品目ごとの値動きは企業物価指数の推移(品目別)で確認できます。

使うときの注意点

・基準年度が違う指数はつなげない:2026年6月に2015年度基準から2020年度基準に改定されました。基準年度が違う指数どうしは、そのまま割り算して比べられません。
・個別の工事の価格とは一致しない:工事の種類ごとの平均的な投入の割合で作られた指数なので、実際の工事の見積もりは、仕様や地域、時期によってずれます。
・月ごとの振れがある:月別の指数は振れることがあるため、国土交通省は参考として「後方3か月平均値」も公表しています。比べる期間は明記して使います。

工事ごとの原価の管理は工事原価管理も参考にしてください。

よくある質問

現在は2020年度を100とする2020年度基準です。国土交通省は2026年6月に、2015年度基準から2020年度基準に改定しました。基準年度が違う指数どうしは、そのままつなげて比べられません。

国土交通省が作成し、政府統計の総合窓口(e-Stat)で月別・四半期別・年度別の表を見られます。建設総合のほか、建築総合・住宅・非住宅・土木総合など工事の種類ごとの系列があります。

企業物価指数は企業どうしで取引されるモノの価格の指数です。建設工事費デフレーターは、資材だけでなく労務費やサービスも含めて、建設工事に投入されるものの価格を工事の種類ごとの割合で合わせた指数で、資材の価格には企業物価指数などが使われています。

まとめ

建設工事費デフレーターは、名目の工事費を基準年度の実質額に直すための国土交通省の指数で、今は2020年度=100で表します。過去の工事費に「今の指数 ÷ 過去の指数」を掛ければ今の価格の目安が出て、名目の工事費を指数で割れば実質額が出ます。基準年度が違う指数をつなげないこと、比べた期間を明記することがポイントです。

出典と確認日

この記事の内容は、国土交通省「建設工事費デフレーター(2020年度基準)の概要及び改定内容について」(2026年6月)と、政府統計の総合窓口(e-Stat)の建設工事費デフレーターの公表値に基づいています。最終確認日:2026年10月15日。

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